甲状腺中毒症
血中の甲状腺ホルモンが増えて体重減少、全身倦怠感、手のふるえ、動悸、息切れ、脈が速くなる、暑さに耐えられないといったような症状をきたす状態を甲状腺中毒症と言います。甲状腺中毒症の原因は、甲状腺がホルモンを過剰に産生する「甲状腺機能亢進症」と、甲状腺の破壊による「破壊性甲状腺炎」に大別されます。
甲状腺機能亢進症
バセドウ病
甲状腺機能亢進症の中で最も多いのが、バセドウ病です。TSH受容体抗体(TRAb)やTSH刺激抗体(TSAb)の刺激によって、甲状腺ホルモンの合成・分泌が亢進します。
機能性結節性甲状腺腫
甲状腺の結節(しこり)がホルモンを過剰に分泌します。
TSH産生腫瘍
脳下垂体の腫瘍が、TSHを過剰に分泌した結果、甲状腺機能亢進症をきたします。
妊娠性甲状腺機能亢進症
妊娠初期(10~15週)に胎盤の成長に伴って分泌される性腺刺激ホルモン(絨毛性ゴナドロトピン:hCG)が甲状腺を刺激して、甲状腺機能亢進症をきたします。hCGは妊娠中期になると自然に低下するため、甲状腺機能亢進もそれに伴って改善します。
破壊性甲状腺炎
何等かの原因によって、甲状腺ホルモンを産生する細胞が破壊されて甲状腺内に蓄えられていた甲状腺ホルモンが血液中に放出されることで、甲状腺中毒症状を引き起こします。無痛性甲状腺炎と亜急性甲状腺炎が代表的です。
無痛性甲状腺炎
バセドウ病や橋本病などの自己免疫性疾患を基礎として、ストレスや、ある種の薬剤をきっかけに発症します。通常は3ヵ月程度で自然軽快します。
亜急性甲状腺炎
風邪などのウイルス感染をきっかけに発熱と甲状腺部の痛みを伴って発症します。軽症の場合は解熱薬などの対症療法だけで軽快します。症状が強い場合はステロイド薬を内服します。いずれにしてもやはり3ヵ月程度で軽快します。
薬剤性甲状腺中毒症
薬剤の副作用による甲状腺中毒症です。代表的なものとしては、抗不整脈薬のアミオダロンやC型慢性肝炎の治療に使うインターフェロンαが挙げられます。甲状腺機能亢進症にも破壊性甲状腺炎にもなり、それによって治療方法が異なるため見極めが大事です。その他、稀ですがヨードを含んだ薬剤(造影剤、うがい薬)によって甲状腺中毒症が起きることもあります。