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甲状腺腫瘍

バセドウ病や橋本病は甲状腺全体が腫れますが、甲状腺に結節(しこり)ができることがあります。結節ができて甲状腺の一部が腫れることを結節性甲状腺腫と呼びます。

結節には、正常な細胞が異常に増殖してできる腺腫様甲状腺腫、腫瘍の2つがあり、腫瘍には良性の腫瘍と悪性のがんがあります。

水分や血液が貯まってできるのう胞は増殖する細胞を含まず腫瘍ではありません。

良性の結節は、濾胞腺腫と腺腫様甲状腺腫が大部分を占めます。

悪性の腫瘍は、90%以上が乳頭がんで、他に髄様がん、濾胞がん、悪性リンパ腫、未分化がんがあります。触診で甲状腺腫瘍が発見された場合、がんの頻度は517%です。

甲状腺がんの予後はがんの種類によって違い、乳頭がんの15年生存率は約95%と良好ですが、未分化がんの1年生存率は20%以下で、とても予後の悪いがんです。

甲状腺腫瘍は良性であることが多く、がんである確率は高くはありません。

首のリンパ節の腫れや甲状腺が硬く動かないなどがあるとがんの確率が高くなります。

甲状腺腫瘍の症状

小さな腫瘍ではほとんど症状がありません。

大きな腫瘍では気管や食道の圧迫症状が見られます。腫瘍が反回神経という神経に触ると声がかすれたり物を飲み込みにくくなったりします。また、急に腫瘍が大きくなると痛みが出ることもあります。

甲状腺腫瘍の診断

まず、触診で甲状腺に腫れやしこりがないか診察します。甲状腺の周りのリンパ節が腫れることがあるので、前頚部と側頚部を注意深く触ります。

甲状腺超音波検査で甲状腺の中身と周りのリンパ節を詳しく調べます。腫瘍があった場合、大きさ・位置・形・色合い(白黒のコントラスト)などをよく見て、がんの可能性がないか判定します。

腫瘍がある程度以上の大きさでがんを疑う場合、腫瘍に針を刺して中の細胞を顕微鏡で見て詳しく調べる穿刺吸引細胞診という検査を行います。

血液検査で甲状腺機能やサイログロブリンという腫瘍マーカーを調べます。

まれに、機能性結節という甲状腺ホルモンを異常に作るしこりができることがあり、血液検査で甲状腺ホルモンの値が高くなります。

サイログロブリンは良性の腫瘍でも高くなりがんの診断には使えませんが、濾胞性腫瘍を疑う場合に測定します。また、がんの治療後の状態を調べるために測定します。

髄様がんを疑う場合はCEAという腫瘍マーカーやカルシトニンを調べます。

甲状腺がんであることが分かったらCT検査などで転移がないか全身を調べます。

甲状腺腫瘍の治療

良性の腫瘍で症状がなければ特に治療は行わず経過を見ます。気管や食道の圧迫症状が強い場合や腫瘍がどんどん大きくなって肺の方に進展する場合は手術を行うことがあります。

また、のう胞成分を多く含む大きな良性の腫瘍に対して経皮的エタノール注入療法を行って腫瘍を小さくする治療を行うことがあります。

リンパ節転移や他の臓器への転移があるようなリスクの高いがんに対しては甲状腺を全部摘出する手術を行います。転移が無く、リスクの低いがんに対しては甲状腺の一部を摘出する手術になることがあります。

また、以下のような治療を行うことがあります。

  • 手術後の放射線治療(放射性ヨウ素内用療法)
  • 甲状腺ホルモンを補充して甲状腺に対する刺激を抑える治療(TSH抑制療法)
  • 分子標的薬による治療

当院で甲状腺腫瘍が見つかった場合、甲状腺外科や耳鼻咽喉科の専門医療施設と連携をとって適切な検査・治療を進めて参ります。

甲状腺のしこりについてお聞きになりたいことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018.日本内分泌学会.

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