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橋本病(慢性甲状腺炎)

【橋本病とは】

橋本病は自己免疫疾患の一つで、細菌やウイルスなどから体を守るための免疫作用が自分の甲状腺を攻撃してしまうことによって起こります。この自己免疫作用により甲状腺に慢性的な炎症が生じ、甲状腺の正常な組織が少しずつ壊れていきます。
十分な甲状腺ホルモン(心臓や肝臓、腎臓、脳など全身の臓器の代謝を上げるホルモン)が作れないほど甲状腺の組織が壊されてしまうと、甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモンを補充する治療が必要

となります。
橋本病は女性に多く、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられます。橋本病の発症に関係する要因として、遺伝によるものと環境によるものがあります。
日常生活では食べ物に含まれるヨウ素(昆布などの海藻類に多い)の摂取量に注意が必要です。多すぎても少なすぎても橋本病の発症リスクが高くなります。

 

【症状】

甲状腺が腫れて、首の圧迫感や違和感を感じることがあります。
甲状腺機能低下症になると、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じます。女性では月経過多になることがあります。うつ病や認知症のような症状が現れることがあります。代

謝機能が下がり、コレステロール値が上がったり、肝機能障害が見られたりします。
また、甲状腺の細胞が壊されて甲状腺ホルモンが血液中にあふれ出ると、一時的に甲状腺機能が上がり、バセドウ病と似たような症状(甲状腺中毒症)が現れることがあります。これを無痛性甲状腺炎と言います。

 

【診断】

橋本病の診断は症状と検査所見を合わせて行います。①甲状腺が全体的に腫れていてバセドウ病など他の病気がなく、②甲状腺の自己抗体(抗サイログロブリン抗体または抗TPO抗体)が陽性の場合、あるいは顕微鏡で甲状腺の細胞を見て特徴的な所見を認める場合、橋本病と診断されます。
甲状腺が腫れておらず甲状腺機能も正常で、甲状腺の自己抗体のみが陽性の場合、橋本病疑いとなります。バセドウ病と同様に甲状腺エコー検査も合わせて行いますが、甲状腺が正常よりも黒く見えたり“まだら”にみえたりする場合、橋本病の可能性が高いです。

 

【治療】

甲状腺機能が正常であれば治療の必要はありません。甲状腺の炎症が続き甲状腺機能が下がってしまった場合(甲状腺機能低下症)、チラーヂンS というお薬を飲んで甲状腺ホルモンを補充します。甲状腺ホルモンの値を見ながらお薬の量を調整しますが、一般的に甲状腺機能低下症の治療は一生必要となります。
妊娠中、特に妊娠初期(妊娠13週頃まで)は甲状腺機能を適切な値にコントロールすることが大切です。甲状腺機能低下症は不妊、流産、妊娠高血圧症候群などの原因となることがり、橋本病の患者さんが元気な赤ちゃんを産むためには甲状腺機能の管理がとても大切です。橋本病をお持ちで妊娠された方は早めにご相談ください。

 

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