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妊娠と甲状腺:ママと赤ちゃんのための甲状腺の知識

妊娠と甲状腺の関係

妊娠は、女性にとって極めて大きなライフイベントです。この特別な期間には、女性の体だけでなく、赤ちゃんにも大きな変化が起こります。その一つが、甲状腺という臓器の働きです。

甲状腺は、体全体の代謝を調節するホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは、心拍数、体温、エネルギーレベルなど、体の様々な機能に関わっています。特に、脳の発達には欠かせないホルモンです。

妊娠中は、胎児の成長に合わせ、お母さんの体には多くの変化が起こります。その中でも、甲状腺ホルモンの必要量は大幅に増加します。これは、胎児の脳の発達に不可欠なためです。

妊娠中に起こり得る甲状腺の病気の種類

妊娠中に起こりうる甲状腺の病気には、大きく分けて2種類あります。

甲状腺機能低下症: 甲状腺ホルモンが不足する状態です。妊娠前に甲状腺機能低下症と診断されていた方が妊娠した場合、ホルモン剤の量を調整する必要があります。また、妊娠中に初めて甲状腺機能低下症になる場合もあります。

甲状腺機能亢進症: 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される状態です。妊娠中にバセドウ病や、橋本病に伴う無痛性甲状腺炎が悪化することもあります。

妊娠〜分娩後の甲状腺管理

TSH値を目標に、安全な妊娠を

妊娠中の甲状腺の管理は、お母さんとお子さんの健康にとって非常に重要です。甲状腺ホルモンの分泌量が適切でないと、流産や早産、胎児の発育不全などのリスクが高まる可能性があります。

TSH値とは、下垂体が分泌し、甲状腺を刺激するホルモンで、甲状腺機能を評価する上で重要な指標です。

妊娠中のTSH目標値

妊娠前~妊娠初期(13週): TSH < 2.5μU/ml

妊娠中期以降(14週~): TSH < 3.0μU/ml

上記が一般的な目標値ですが、個人差や妊娠経過によって調整することもあります。

TSH値が高い場合

TSH値が目標値よりも高い場合は、甲状腺ホルモンが不足している可能性があるため、甲状腺ホルモンの補充を開始、または増量して、ホルモンバランスを整えます。薬は妊娠中、授乳中も安全に服用できます。

TSH値が低い場合

TSH値が目標値よりも低い場合は、バセドウ病や、橋本病に伴う無痛性甲状腺炎の可能性があるため、甲状腺エコーや血液検査が必要です。

妊娠中の定期的な受診

  • 妊娠4~6週: 妊娠が判明したら、できるだけ早く受診し、甲状腺機能をチェックしましょう。
  • 妊娠30週前後: 妊娠中期以降も、定期的に甲状腺機能をチェックすることが大切です。

分娩後

  • 甲状腺ホルモン剤の調整: 分娩後は、甲状腺ホルモンの必要量が減るため、甲状腺ホルモンの補充量は、妊娠前に戻るのが基本です。ただし、橋本病の方は、時間の経過による甲状腺機能の低下が進んでいる可能性があるため、やや補充量をやや多めに残すことがあります。
  • 無痛性甲状腺炎に注意: 産後1~2ヶ月頃に、無痛性甲状腺炎を発症することがあります。症状としては、動悸や疲れやすさですが、授乳で寝られない日々と重なるため、甲状腺の病気と気づきにくいことが多いです。無痛性甲状腺炎は大抵は1〜2ヶ月で自然に治ります。

まとめ

妊娠中は、お母さんの健康だけでなく、赤ちゃんの健康のためにも、甲状腺の管理が非常に重要です。甲状腺の病気がある方、または妊娠中に甲状腺に異常を感じた方は、どうぞ早めに相談されてください。

 

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