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尿糖陽性でも血糖値は正常なのはなぜ?糖尿病の可能性と再検査の目安

2026.10.13 糖尿病内科
尿糖陽性と正常血糖が食い違う理由を、採血と採尿の時間差、SGLT2阻害薬、腎臓の個人差で示した図

健康診断の結果票に「尿糖+」。ところが同じ日の血糖値は基準範囲内で、HbA1cもそれほど高くない。「糖尿病なのか、違うのか」と戸惑う組み合わせです。

この二つの数値は、そもそも同じ時間の血糖を見ているとは限りません。採血は針を刺した時点の血糖値、尿糖は前に排尿してから採尿するまでに尿へ出た糖の痕跡です。まず結果の“時刻”をそろえて読むと、食い違いの理由が見えやすくなります。

尿糖陽性と正常血糖が食い違う理由を、採血と採尿の時間差、SGLT2阻害薬、腎臓の個人差で示した図

採血は「その瞬間」、尿は「それまでの記録」です

血液中のブドウ糖は腎臓でいったん濾過されて、多くは体内へ戻されます。血糖が上がり、戻し切れなくなった分が尿へ出ると、尿糖が陽性になります。ただし、尿は膀胱にしばらくたまります。採尿した時点の血糖値と、尿が作られていた時間帯の血糖値がずれることがあるのです。

たとえば朝食後に血糖が上がり、その後に下がってから採血した場合、採血では正常でも、同じ時間に採った尿には朝食後の上昇が残っていることがあります。健診票を見るときは、採尿と採血が何時だったか、最後に食べたのは何時かを確認してみるとよいでしょう。

空腹時の血糖値が正常でも、食後に上がることがあります

糖尿病の初期や糖尿病になる手前では、空腹時血糖はまだ高くなくても、食後だけ上がる場合があります。一度の空腹時血糖だけでは、その動きを把握することはできません。HbA1cはここ1〜2か月ほどの平均的な血糖を反映するため、一時的な食後上昇が目立ちにくいこともあります。

糖尿病の診断は尿糖だけでは行わず、静脈採血で血糖値とHbA1c、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験で確かめる必要があります。日本糖尿病学会の診断基準では、空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、負荷試験2時間値200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上が「糖尿病型」の基準です。ただし、一つの値を一度超えただけで全員が直ちに糖尿病と確定するわけではなく、結果の組み合わせや症状を見て再検査します。

SGLT2阻害薬による尿糖陽性

糖尿病、心不全、慢性腎臓病などに使われるSGLT2阻害薬は、腎臓で糖を体内へ戻す働きを抑え、糖を尿へ出す薬です。この薬を使用中なら、血糖値がよくても尿糖は陽性になるので、特段問題ありません。添付文書にも、服用中の尿糖は血糖コントロールの指標にならないと記載されています。

ご本人が薬の種類を覚えていなくても、お薬手帳を見れば確認できます。健診結果だけを見て薬を中止したり、「糖が出ているから薬が効いていない」と考えたりしないでください。薬による尿糖と、治療前からの高血糖を分けて読む必要があります。

腎臓から糖が出始める血糖値には個人差があります

尿へ糖が出始める境目は全員同じではありません。血糖値がそれほど高くなくても尿糖が出やすい体質があり、「腎性糖尿」と呼ばれます。妊娠中も尿糖が出やすくなることがあります。反対に、血糖値が高くても尿糖が目立たない場合もあるため、尿糖の+や−だけで血糖の状態は判断できません。

尿糖陽性が続くときは、血糖とHbA1cだけでなく、服薬、妊娠の可能性、腎機能、尿たんぱくなども一緒に確認します。必要な検査は結果と背景によって違い、全員に負荷試験が必要なわけではありません。

受診時は健診結果とお薬手帳をお持ちください

診察室で最初に知りたいのは、尿糖の+がいくつだったかだけではありません。採尿・採血の時刻、食後何時間だったか、SGLT2阻害薬を含む薬の有無、過去の血糖値とHbA1cの変化です。健診票を写真だけでなく可能なら原本ごと持参し、前回までの結果も並べると、病態の把握がスムーズになります。

受診・相談の目安

尿糖陽性が繰り返される、血糖値やHbA1cも高い、家族に糖尿病がいる、妊娠中・妊娠希望の場合は、結果票を持って相談してください。強いのどの渇き、尿量の増加、体重減少、吐き気や強いだるさがある場合は、健診の再検査日を待たず血糖を確認する必要があります。

まとめ

尿糖と血糖値が食い違うときは、まず「同じ時間の血糖を見ていない」可能性を考えます。食後に一時的に上がっていた、SGLT2阻害薬で糖を尿へ出している、腎臓から糖が出やすい体質など、理由は一つではありません。

尿糖陽性だけで糖尿病とも異常なしとも決めず、採尿・採血・食事の時刻とお薬手帳をそろえ、血糖値、HbA1c、必要に応じた追加検査で確かめましょう。

医師紹介(監修)

長田 潤

長田 潤 先生

うるうクリニック統括院長

尿糖は陽性なのに血糖値は正常——そんな健診結果が出る理由を、採尿と採血の時間差、SGLT2阻害薬、腎臓の個人差から整理。次の診察で確認したい項目も説明します。

参考文献